家庭学習が2ヶ月以上続くフランス 3月中から9月まで学校はないかも

コラム
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親が先生…家庭学習が始まった

3月16日月曜から学校が閉まり、3月17日火曜日からロックダウンを開始したフランス。ロックダウンとは基本的に家から外に出られない。子どもと外出できるのは散歩や健康上の理由を保つための1日1時間。許可書を作り、携帯しないと罰金など厳しいものだった。しかも最初の1週間は感染の危険が高いからパパが家から一歩も出るなと言った。幸いうちには小さな庭があるので家の外に出ることはできたけど、暴れざかりの9歳の1人息子はいきなり友達とも会えなくなり、一緒にサッカーしたり転げ回って遊ぶこともできない状態となった。

そして家庭学習がスタート。息子は学校や給食がストライキの時、私と一緒に会社に来ることもあったので仕事をする私の横で過ごしたことは結構あった。でもそれが毎日で親が先生役の授業をするとなるとちょっと話が違ってくる。
息子の担任は2人。新卒の2人の先生が1週間ごとに交代で授業をしていた。新卒なので他の学校にも1週間ごとに行っている。色んな違う学校環境で早く経験が積めるように、とそういう仕組みになっているらしい。
その2人の先生が週交代で課題と習得事項を送ってきて、それを元に月・火・木・金の4日間の家庭授業をしている。フランスでは水曜の午前授業の有無はそれぞれの市で決められた。私達のパリ近郊外の市では水曜の午前授業は2年位前からなくなった。となりの市では今でも水曜午前授業はある。子ども達の間で学力の差がつくとかの議論はあったものの結果としてそうなった。

息子のクラスでは課題をさっさと終わらせると教室の後ろで本を読んだり落書きしても良いらしい。問題を解いても全く見直しもしないし、全然集中力も続かない。以前一度、授業中の学級を覗く機会があったが生徒が課題を終えたら教室内を自由に歩き回っていてこれで授業が成り立つんだと不思議に思ったものだ。

課題はフランス語と算数のみ。私は自分が大人になってからフランス語を耳から覚えたので、9歳の子どもの学習内容でも文法を理解するのにまず時間がかかる。それから教えるために前日に次の日の予習をして、どっからみてもやる気のない息子に説明しないといけない。自分が理解できるのと人に教えるのとは本当に違う。結局たまに先生がユーチューブなどで文法の説明画像を送ってくるとそれだけ何度もみたい!と言って延々と見てるが、目を開けて寝てるんじゃないかと疑うほど全然頭に入っていない。

幸い、算数は得意らしくなぜか九九もほとんど覚えていてびっくりしたと同時に、やり直す手間が省けるのでありがたい。それに対してフランス語は頭っからキライ〜と息子は既に苦手意識をもっている。できない前提でやるとますますそうと刷り込んでしまうのでどうにかしてあげたいんだけど…フランス語はパパがやってよ〜と思ったけど、パパもテレワークで手一杯、結局1日交代で息子の先生役をすることにした。

それにパパだと結構いい加減。わかった?で済ませてしまう。私も教育ママではないし、日本語も週1回、1時間半だけ習わせていることもあり、日本語もやらせているのは負担かもしれないという思いもある。それに息子は本(というよりまだマンガ)が好きだから、その好きという感覚があるならそのうちフランス語も読めるようになるよ、とも思っている。今でも寝る前はパパと一日交代で私はドラえもん、パパはフランス語のマンガ…の読み聞かせをしている。

面白いのは息子は日本語の漢字が意外とわかったりする。見ていると視覚から入る絵文字のような方が入りやすそう。それにしても未だにb,p,g,qを間違える。学習障害かと疑われた事もあったけど、なんのことはない、息子のクラスメートには太鼓判を押された学習障害児が何人もいるらしくその位では特別?扱いしてくれないらしい。大昔は勉強ができない子どもに学習障害とかハイパーテンションとかの名前をつけて区別することもなかったと思う(そんな余裕がなかったというか)。子どもの成長は人それぞれなので今勉強ができないから駄目な子と親が言って、子どもにもそう思い込ませるのは残念かもしれない。時にあまりのレベルにあきれてしまう事はあっても、本が好きなら最低限の読み書きはそのうちできるようになるさと思うようになった。子どもも親もプレッシャーを感じながらの家庭学習が毎日続くと面白くないしのは勿論だし、お互いに嫌になる。勉強に向いてないなら他のことをやればいい、いつか勉強が必要ならするようになるかなとも思う。実はうちはパパがそのタイプでかなり遅く勉強を始めた人なので、実例がそばにいるとそういう風に考えることもできるのはありがたい。

学力低下?フランス格差社会の闇

それにしてもフランスは学力が低下してるんじゃないかな、と子どもの頃あまり勉強しなかったパパでさえ、この学習内容はとても小学校3年生のものとは思えない…とこぼすしていた。それでも一回やって理解したぞ、と思ったら次の日には全部忘れていたり、全然チンプンカンプンなことを言う。根気よく何度も同じことをやらないと頭にそう簡単には入らない。

それにこの簡単な学習内容は敢えて学力を落として社会的格差が広がるのを防ごうとしているのではないか?と思ってしまう。マクロン大統領が2度めのロックダウン延長を発表した時、学校の再開を最優先課題の一つにすると発表した。こんな危険な感染状況の中で子どもだけを学校に行かせるのか!とみんな口を揃えて批判しロックダウン解除に向けた政策の大きな論点の1つとなった。しかしそこにはフランスの複雑な社会的格差問題が見えているからだろう。実際、十分な家庭学習をすべての家庭ができるわけではないから、という理由からだった。

どこの国もそうかもしれないけど、子どもが勉強できない→学校にいかなくなる→十分な収入がある職につけない→貧しくて反社会分子となる、という構造がぐっと身近なのが移民の国フランスやヨーロッパの実情だったりする。フランスには生徒の成績や家庭状況、収入などで判断される優先教育地区というのがある。その地区は結局移民が多く親がフランス語も話せないことも多々あり、子どもへの学校教育に一層力を入れなければならないという地区だ。

うちの地区は優先教育地区ではないが、私を含めた両親のどちらかが外国出身の移民という人もかなり多い。実際息子のクラスのお母さんにはアルジェリアの出身で、自国の字も読むことも書くこともできないと言う人もいる。何しろ7人兄弟だったから小学校高学年から既に掃除などの仕事をして家計を助けていたそう。彼女はまだフランス語が話せるけど、もう一人の中国出身のお父さんはフランス語が話せないし英語もカタコト。それでもやっていけるのがフランスなんだけどそういう事情で家庭学習が困難な場合もあるのでやはり学校教育が大切となる。それにしてもそれぞれの異文化を持つ生徒たちがミックスされた教室で授業をする先生たちは大変だなあと思う。

私立の学校に子どもを行かせているママと話すと、宿題が多すぎて大変!と言っていた。聞くと学習内容のレベルも高いし親も学校も勉強熱心。学校は基礎の勉強と人間関係など社会生活が学べる場と考えている私とは全然学校に求めるものが違っていた。ただ子どもは影響を受けやすいのでみんなが勉強する雰囲気だとそれにつられて上に引っ張り上げられるというのも本当、逆に勉強しない雰囲気だとそちらに引っ張られるというのも事実。そうと言って勉強もまだ興味なさそうな息子を私立に入れてもね…と思っている。

ロックダウン解除でも学校に行けない、9月まで学校なし?

5月11日待ちに待ったロックダウン解除。でもまだパリは感染危険区域のままだし学校が開いても行かせないという親が多かった。フランス政府から開校できるという発表があったのは木曜の午後。学校からの連絡は祭日だった次の日金曜日の夜22時だった。私達の市はこんな短期間にソーシャルディスタンスを保つなどの対策をして開校するのは無理ですと大統領に言った市の一つ。結局1週間は休校のままという通知だった。

その後、25日からは小学校1年生と5年生、そして空きがあればその兄弟姉妹が行ける予定と連絡があった。息子の学校はこの市で一番のマンモス校。小学校1年から5年までで400人以上の生徒がいる。(こちらでは小学校は5年生まで次から中学となる)1クラス26人いるのをソーシャルディスタンスを保つために受け入れは15人までという制限があるので、当然みんなが行けるわけではない。

そして25日前の週は木曜が祭日。週末と挟まれた金曜が連休とされて息子の学校は水曜授業がないので5連休。そんな中、担任からまた通知が来た。「25日からの小学校1年生と5年生とその兄弟の受け入れも結局できません。どうしても家庭学習が困難で学校を辞めてしまう危険のある子どもなどは優先的に受け入れを考えますが、6月までに全ての生徒が一度はソーシャルディスタンスを保って交代で学校へ行けるように検討しています。」 

ということは…3月中旬から9月まで学校がない…。
日本では遅れを取り戻すために夏休みなしなども検討されているようだが、フランスではそういう議論は論外でだれも口にすることはない。2ヶ月近く夏休み(しかも宿題ゼロ)があるのでそんな議論は出ないのか?と会社のミーティングで聞いたら、「そんなことは絶対できない、それやったらまたフランス革命が起きるよ」と社長にも真剣に言われてしまった。

同僚の住む隣の市では1クラスを2つのグループに分けて、子どもが交代で週の半分ずつ行けるという対策をしたそう。こういう所は本当に市の対策で違う。同僚はどちらにしろ感染危険度がまだ高く夏休みにお婆ちゃんに会いに行く予定なので、もしも子どもが感染してうつしたら大変だから学校へは行かせていない。(なので会社には9月まで来れないから宜しく、と爽やかに言っていた。)
果たして学年が変わる前に息子は学校に1回は行けるのだろうか。そしてテレワークしながらの家庭学習はロックダウン後もまだまだ続く。

 

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