ロックダウン10日後、初めて家の外に出た
38,5度の突発熱騒動も1週間を経過し、今は薬も効かない花粉症の鼻水症状のみ。またひどくなって寝込むのも嫌なので庭に出る時もマスクをして家で様子見をしていました。その後は熱も出ないし、咳も全くでなかったのでコロナウイルスではなかっただろろうと思います。
そこで今回はロックダウン後、10日ぶり(3月27日)に家の門の外へ9歳の息子を連れて散歩へ出てみた時の街と人々の様子についてお伝えします。
10日も家の外へ出ていないと体がギシギシ言っている気もしますし、運動不足でお腹がすかないのにいつも通りの食事だとお腹が重く感じます。しかも家にいるのでなぜか普段は食べないアメなどのジャンクフードに手が出てしまいます。
スポーツや買い物などの外出は1時間以内、家から1km内のみ。日付、家の住所、名前、出発時間!の入った許可証を自分で書いて身分証明書と一緒に携帯することが義務付けられています。
いざ外に出てみるとうちの周りは庭のある家が多いところなので庭に咲く色とりどりの花に感動。もう春になっていたんだ!いつもは家と仕事と息子の学校の迎えなどで走り回っているので花に目を留める余裕さえなかったと気づきました。
そう言えば突発熱で2日間ガレージの一室にこもっていたとき、そこから見える庭のプラムの木も今年は結構長い間、花が散らないんだなと思っていました。きっとプラムはいつも長く咲いているのに時間を取ってみつめることがなかったのですね。
人々がギクシャクしている
夕方だったので、外で同じく散歩している人、ジョギングをしている人や家族もいました。しかし人々もなんだかよそよそしい。“家に同居している以外の人と人の間は最低1m離れておくこと”という政府指導を守っているせいか、人に会いたくないというギクシャクした雰囲気。
2、3歳くらいの子どもを連れて道で遊ばせていたお母さんが “やっぱり夕方は人が多く出ていて危ないから、もう帰りましょう”、と子どもに言っていました。“人がいるから危ない”・・・そう言わざるを得ないという状況。このお母さんも私達もみんな想像すらしていなかった出来事を経験しているんだなあと感じました。
いつもはこんな近所だと、“きれいな花ですねー”と気軽に声をかけるのですが、私は花粉症用にマスクとサングラス。パパに手袋をしていけと言われかなり怪しい出で立ちなので、今の状況ではなおさら話しかけられたくないのではと勘ぐってしまいます。
だいたいフランスなどでマスクは顔を隠すので防犯的理由でよく見られないことと、マスクで病気を予防できるという考えがないのです。今回のコロナ騒動でもマスクはフランスでも売り切れたのですが、フランスの厚生省大臣は“普通のマスクは感染を防ぐには無意味、ウイルスを持っている人が広げないためにするもの”と言い、医療現場の第一線で仕事をしている医者たちからも“マスクを持っていたら差し出して欲しい”という呼びかけがあったほど。マクロン大統領はマスク工場へ出向いてマスクの増産をしていると会見するほど。
そういう訳でこれまではマスクをしていると変な病気を持っている人、(マスクをしてまで人にうつしてはいけない病気を持っている人)と思われるのが常で、外でマスクをしていると人々から結構ジロジロと遠慮のない冷たい視線を投げられます。それでもロックダウンが始まってからとマスクをしている人が出てきたと彼に聞いていたのですが、ちらほらとしている人もいてびっくり。初めて道でマスクしたフランス人たちを見るという経験をすることになりました。
それにしてもレストランやカフェ、学校、映画館、スポーツ施設も全部閉まっています。空いているのはスーパーやパン屋さんなどの生活必需品を売るお店のみ。いつもであれば道は子どもであふれかえる時間なのに子どもが少なくやけに静かでした。
ママ友や親類が感染したご近所さんの話
息子の同級生で私のママ友でもある一家が近くに住んでいます。彼らの家の前で呼び出すと窓から顔を出してくれるというので行ってみると、ちょうど裏庭の方でパパは縄跳び、ママは子ども2人とボールで遊んでいました。柵越しでしたが久しぶりに家族以外の人と合って話をしました。息子も同級生と私にはよくわからないゲームの話で盛り上がっていました。
ママ友の街の情報は本当にありがたいものです。お肉屋さんは午前だけ空いていて前日にオーダーすると取りに行くだけで並ばなくていい、とかスーパーは入場制限してて並ぶので1番良い時間帯は12時半〜13時半など。手に入りにくい生鮮食品はたまご、小麦粉なので朝早く行かないとない、スーパーのネット配達のサービスは注文量に追いつけず、取りやめているスーパーが多いなど。
その後、庭を隔てたご近所さんたちとも遭遇。ご近所さんとその隣の人が1mくらい離れた横並びで歩いていました。1人はもう来年は定年退職、もう1人は既に定年している年齢です。来年定年の彼女は2年前にガン治療で化学療法をしました。血液検査などをする医療系で働いているので最初は出勤しないといけなかったそうです。しかし上司がもしも感染したら化学療法で免疫力が低いはずなので危ないと病気休暇になったそうです。既に定年している彼女の方ももう10年くらい前に同じくガンの化学療法をしたそうです。なので2人とも“ウイルス感染の要注意カテゴリー”に入ります。ただ私と同様に10日間も家の中にいて、一方のお隣さんは庭がないので、もう限界とマスクにビニールの手袋で完全防備してロックダウン後初めて外に出たと言っていました。
家に戻ってくると左側のご近所さんにも遭遇。彼女の方は娘さんが看護婦!その上感染者がパリ市内外から2番めに多いフランス西側地域に住んでいる親戚が既に3人コロナウイルスにかかった。病状はひどくないから自宅待機で大丈夫だと思うけど、娘のことも毎日心配で悪夢を見るし家で仕事しているけど手に付かない、と言っていました。あまり個人的な話をしないお隣さんだったので、初めて娘さんのことも話してくれてちょっとびっくりしました。人間は社交的な動物なので外と遮断されるとやっぱりコミュニケーションをしたくなるのかなと思いました。
子どもが気をつけるのは大変
家に入ると息子が外に出た手袋のまま既に色々あたり散らかしていて、パパにこっぴどく叱られていました・・・。本当に息子は、というより子どもは、聞いたことが長く残らないので何でも触る・・・何も触っちゃだめだよ、と言い聞かせて出かけても、5分後にはポールや壁、駐車中の車、下手をすれば地面に落ちているものを拾う・・・9歳でもこれなんだから小さい子はもっと大変でしょう。おまけに顔も平気で触るし息子は口に手をやる癖がある。
普段なら危険でないなら、ちょっとは汚いことして泥んこになっても、そうやって感覚や免疫を養っているのであまり過敏に言い過ぎないように気をつけています。私は日本のきれいな環境で育ったのでつい口を出したくなってしまうからです。
しかし今回のコロナウイルスは本当に厄介。いちいち、汚い、顔を触るな、手洗った?と監視して四六時中一緒にいる、しかも1人っ子なので自然と注意が1人に向いてしまう子どもを追い詰めるようになります。
どっちにしても、うちでは精神衛生上のことも考え、“子どもは感染してもかすり傷程度だよ〜”と信じこませているし、日本に比べてフランスは衛生上、後進国なので自然に免疫力が高く育っているだろうと信じたのですが。
ロックダウンという本当にありえないような経験を通して、色々見えてくるものがありますが、私がこれを“良い経験だった!”と言えるようになるまでにはまだちょっと時間がかかりそうです。